
保険は資金調達の手法であり、一つの金融商品です。
しかも、有事の際の資金調達方法であり、企業の存続を左右するものと言っても過言ではありません。しかしながら、経営者にその自覚が非常に薄く、保険というものを軽く考えている傾向が強いのが現実です。
融資は先にお金をもらって、後で元本と利息を支払う形でリスクを後ろに平準化しており、保険というのは先に保険料というコストを負担して有事の際に保険金の支払いを受けると言う形で前にコストを平準化しているだけなのであり、そもそも性格が似ています。
しかしながら、融資獲得は経営マターで何度も銀行と議論をするが、保険の契約や更改については、同等の重要性があるにも関わらず、事務処理的な対処をしている企業が多いのが現実です。保険に対する意識を変えなければ、有事の際に後悔することになると思います。
極論を申し上げますと、経営者や役員・従業員が死亡しても、建物や機械が破損しても、企業を取り巻く環境が大きく変化しても、決算書にマイナス影響を与えないのであれば、保険を掛ける必要はありません。保険はあくまでも財務リスク移転の手法でしかないのです。
決算書を守るために保険を掛けるのであって、人や物に掛けるものではないのです。そこを勘違いしてしまうと、無駄な保険料ばかりを支払うことになったり、必要な保障を準備せず、事故が発生したときに後悔することになるでしょう。
「強い決算書=強い会社」を作るためには保険は必要不可欠なツールです。使い方を間違えなければ安定経営を支える強力な武器になります。
個人の意思決定の基準を法人に持ってくること自体が大きなリスクです。個人の意思決定の基準はある意味、個人的な繋がりや人の好き嫌いでも構わないと思いますが、会社の保険選択の意思決定はあくまでも会社に最大価値を生み出すことが基準でなければなりません。
保険が適切に活用されていないということは経営が不安定な状態であることを意味します。
法人は自社にとって有利な意思決定をしなければならず、それを自己都合で歪めるようなことがあってはならないのです。
ある意味それは従業員や顧客や株主等の期待を裏切る行為でもあり、それによって法人が大きな損失を被るような事が起こると、株主代表訴訟にもなりかねないのです。
保険選択は経営マターであることを自覚し、自社にとって最適な保険は何なのか?をしっかりと理解することが必要であり、そのためには単なる保険商品や保険会社の選択ではなく、保険でカバー出来ないリスクも含めたリスクマネジメントの視点から適正提案を施してくれる保険代理店をしっかりと選択する必要があると考えます。
御社は単なる経営不振ではなく、保険対応が出来るような事件や事故に巻き込まれたことによって倒産の危機に陥ったことはありますか?
保険会社は営利企業であり、発生の頻度も強度(損害の大きさ)も高いリスクを引き受けていると経営が成り立ちません。保険会社が得意とするのは、あくまでも損害は大きいが発生頻度の低い事件・事故です。
ですから、多くの企業が保険を活用するようなリスクに遭遇したことが無いのは当然なのです。
しかしながら、事故はいつ起こるか分かりません。その時に普段は意識しない、むしろ無駄と思っている保険に入っているかいないかが本当に企業の存続を左右する非常に大きな存在に変貌するのです。
保険の価値は事故が起きて初めて発揮されるのです。
普段は意識をするどころか、無駄だと感じている保険が事故発生時には企業の存続を左右する非常に大きな役割を発揮するのです。
保険はたった100円の保険料で億単位の保障を提供する商品です。
若しくはお金のやり取りが無くても、変更手続きを怠っていると保険が下りないことも有り得る非常に怖い金融商品であることをしっかりと理解することが大切です。
事故が起こった時に保険の重要性に気づいても遅いのです。会社の存続を考えるのならは、保険を軽視するのではなく、しっかりとその重要性を認識しておくことが大切です。
税理士や社労士といった専門家は概して偏った視点を持つ傾向があるようです。
専門性が高いだけに、深堀をして部分的な正解を出すのは得意ですが、視野が広がらないため、経営としての全体正解が出せないケースが多いのだと思います。これは保険代理店も同じであり、保険知識はあるのですが、経営・財務・マネジメント等の理解が浅い為、せっかくの保険の知識が経営に活かせないのです。
リスクマネジメントは経営そのものであり、リスクマネジャーやコンサルタントは、全社的な視点から経営にとっての全体正解を導き出す必要があります。
つまり、経営の視点からみた財務・人事労務・保険とはどうあるべきなのかという観点で考えることで全く違った答えが見えてくるのです。会社を強くするためには、全社的な視点でリスクを洗い出し、優先順位の高いリスクから対処するのが王道ですが、保険の視点ばかりが優先すると全体バランスが崩れ、偏ったリスク管理に陥り、会社全体を強くすることが出来ないばかりか、逆に会社を弱くしているケースも散見されます。
財務的な基盤が脆弱な企業と頑丈な企業、未上場企業と上場企業のように、企業の形態や規模によって保険に対する考え方は大きく変わってきます。
例えば、上場企業にとっては財務的な余力があるケースが多く、風評リスクやブランド下落のリスクが大きいため、財務対策としての保険活用よりもコントロール対策が優先されると思われます。
例えば、自動車事故1件をとっても、10万円の免責分を自社負担することは大きな影響はないですが、当て逃げやひき逃げを社員がしてしまうと、非常に大きなイメージダウンに繋がります。そう考えると、車両保険に免責をつけて、浮いた保険料で社員教育をしたり、事故削減の投資をする方がその会社にとっては正解かもしれません。
一般的に、企業規模が大きくなり、財務基盤が出来ている企業ほど、保有対策やリスクコントロール対策の優先順位が高まり、保険への依存が低くなる傾向があります。
財務対策としての保険の活用の前提は保有限度値を知ることです。
保険はあくまでも財務的な保有限度額を超えるリスクに対して移転対策として活用するものです。
保険や保険商品の視点から考えるのではなく、財務とリスクの視点から考えるべきものです。
保有対策と移転対策としての保険のバランスが悪くなると、重大な財務リスクを抱えてしまったり、保有できるリスクに対して無駄に保険料を払うことになってしまいます。
まず、保有対策を考え、保有できないリスクに対しては移転対策としての保険活用を考えるという手順を忘れないようにしなければなりません。
保険を効率的に活用するのならば、リスク量を減らす取組みを継続的に実施することをお勧めいたします。
保険会社によって、保険商品によって保険料の違いはあったとしてもそれほど大きな差に繋がることはありません。
また、不当に安い保険料を提示して来る保険会社はそれこそ破綻の危険性を危惧して頂く方が良いかも知れません。
保険料を下げたければ、自社のリスク量を下げることを考えましょう!
それによって保険料は大きく下がる可能性があります。
具体的には事件・事故が起きない環境を作ることと、保険に依存しない財務基盤を計画的に作ることです。
それが出来れば、保険料が下がることは間違いないと思います。